UKトピックス

UKトピックス

BBCニュースサイトより、注目のトピックスをお届けします。

本棚が持ち主について語ること

What does your bookcase say about you?

イケアの本棚「ビリー」は、30年にわたり世界中の数百万もの部屋で本を収容してきました。発売30周年を迎えたこのシリーズが示すように、なぜ私たちは本をしまいこむのではなく、本棚に飾るのでしょうか。
 ビリーは、本棚界の怪物です。イケアの4人目の従業員だったギリス・ルンドグレーンがデザインしたもので、1979年の発売以来、4,100万台が売れています。本棚の製造工場では、毎分15台、年間で310万台のビリーを製造しています。イギリスの多くの家では、この飾り気のない四角い本棚が部屋の一角に置かれ、シンプルな棚の上にたくさんの本が並べられています。しかし、ビリーを持っているすべての人が、知的な文学作品を並べるためだけに25ポンド以上のお金を払っているわけではありません。CDやDVDの置き場所にもなるのです。
 こういったMDF材(ファイバーボードの一種)を使用した大量生産の家具に対する人気が続くなかで、デザイナーの手描きによるデザインが用いられることは、想像される以上に少なくなっています。イームズやG-planの家具と同じとはいわないものの、謳い文句通りの価値はちゃんとある、とインテリアデザイン・ライターのレスリー・ゲッデズ・ブラウンさんは言います。「いい感じにシンプルで、お値打ち感のある製品です。作りつけの棚とちがって、引っ越しのときも持って行けますしね」と『部屋を飾る本』の著者ゲッデズ・ブラウンさんは語ります。
 家具デザイナーのマシュー・ヒルトン氏は、ビリーの成功の秘訣は、その飾り気のなさだと言います。ビリーはかつてないほど先進的で、個性を排した家具だそうです。「どこにでも置けて、モダンで、工業的なデザインが究極的に追求されています」。
 組み立ては(木ねじや組み立て説明書に慣れていれば)簡単とされ、よほどの気難しいこだわり派でなければ、気に入らないということもありません。

ページトップ

◎自己顕示欲的ディスプレイ


 何より、本を並べてディスプレイするという用途に適したデザインとなっています。大切なのは、家具としての立派さではありません。本棚は目的を果たすための手段なのです。いわば額縁のようなもので、本当にデザインが必要とされるのは中に入れるもののほうです。
 それにしても、なぜ私たちは自分の蔵書を見せびらかしたがるのでしょうか。そのせいで本棚が必要となり、すでに巨額の利益をあげているスウェーデンの家具メーカーをさらに儲けさせているのです。本は必需品ではありません(学生でもないかぎり)。座ったり、食べ物を盛ったりするのには使わないからです。読書や調べ物をしたければ、図書館があります。
 それに、ジェーン・オースティンやジョージ・エリオットなどの古典の名作ならば、著作権が切れた本を複製している無数のウェブサイトに行けば、マウス操作だけで取り出すことができます。くつろいだ体勢でペーパーバックを読むのとはわけがちがうかもしれませんが、古典作品を本格的に読み返すことなど、めったにないのではないでしょうか。
 1930年代に初めて発売されたペンギン・ブックスのペーパーバックは、タバコ1箱と同じ値段で、衝動買いできるように作られていました。読み終われば、とっておく人などいません。ひょっとすると、本は使い捨ての消耗品であるべきなのでしょうか。
 しかし、印刷機の発明から500年以上たった現在でも、本を所有することの重要性と価値観は少しも失われてはいません。インターネットは印刷物の時代に終焉をもたらすと言われました。ところが、ネット時代の初期に成功をおさめたビジネスの一つは、オンライン書店のアマゾンだったのです。
 本棚に対する執着には、自己顕示欲的な面があるという説は否定できません。どれほど多くの本を読んだか(読むつもりや読んだふりも含む)を、ひけらかす行為だということです。たとえば自分は、『フィネガンズ・ウェイク』(ジェイムズ・ジョイスの最後の小説。独特の言語表現により、難解な作品として有名)を手元に置いておくことが必要なタイプの人間だと、さり気なくアピールしているわけです。必要といっても、そのうちほんの少しだけ続きを読んでみる気が起きるかもしれない(そして理解不能に終わる)、という程度のことかもしれませんが……。

ページトップ

◎蔵書からうかがえる

---------------------------------------------------------------
○本棚を整理するには
・アルファベット順にすると、著者名や書名を忘れたときに困る
・園芸、料理、小説などのようにテーマ別に分ける
・大型本は下段へ
・ペーパーバックは上段へ
・絶対に読まない本は手の届かないところへ
レスリー・ゲッデズ・ブラウンによる
----------------------------------------------------------------
 手書きの原稿が最初に製本されてからずっと、本はどこか神聖な雰囲気をまとった存在でした。「本は大変な高級品でした。持ち主の教養の高さ(文字が読めること)を示すだけでなく、非常に高価でもありました。知的にも経済的にも豊かであることを、一度に示すことができたのです」とゲッデズ・ブラウンさんは言います。
 ピーター・サンディコ氏は、本が人間の自我の一部をなすものだと確信しています。書籍ブロガーのサンディコ氏は、「本棚プロジェクト」のなかで読者の本棚の写真を集めています。本のディスプレイの面白い点は、体裁を繕うために、簡単に並べかえることができることだそうです。「本棚に飾る本は、自分が他人にどのように見られたいと思っているかを如実に語ります。真面目でアカデミックな本が好きだと思われたい人なら、古典作品を目立つように並べ、大衆小説は本棚の奥にしまいこみますね」とサンディコ氏。
 それほど構えずに本棚を見せてもらえる場合には、持ち主の本性が読み取れるのだそうです。「蔵書には、他人には容易に見せることのない人間の性格の一面が表れます。「氷の女王」と呼ばれている女性の友人が、彼女の家に行ったとき、安っぽいロマンス小説が本棚にたくさん並んでいるのを発見しました」。
 本棚への愛着には、収集癖的な側面もあります。たくさん買い集めることができる物なら何でもそうですが、本には収集欲や所有欲をくすぐる要素があるのです。古典作品は、装丁や箱入りの全集のセット内容を変えて、ひっきりなしに再版されます。歴史文献の全集は革表紙で見た目も美しく、多くの場合非常に高価です。

ページトップ

◎偽物を飾る


 そういう書籍は、眺めてうっとりするためにあるのです、とサンディコ氏は言います。「自分も愛書家なので、他の愛書家の蔵書を覗いてみたくなります。収集家というのはそういうものでしょう。靴を集めていると、他の人の靴のコレクションが見たくなる。本の収集の場合、必ず驚くような発見がありますね。何が出てくるか予想もつきませんから」。
 人間の心の奥の秘密を暴露したり、覗き見や見せびらかしに役立てられたりしない場合でも、本棚はそれ自体が重要な装飾的要素にもなる、とゲッデズ・ブラウンさんは言います。たしかに、読書とは何の関係もない本棚というものもあります。「人が本を買うのは、紛れもなく本棚を埋めるためです。統一感のあるエレガントな雰囲気を出すために、表紙を隠してしまう人もいます。インテリアデザイナーは、デザインする家に書斎がある場合、本棚を埋めるためにメートル単位で本を注文することもあるんですよ」。
 本棚のデザインをしてくれる専属のインテリアデザイナーがいなくても、絶望することはありません。書斎の雰囲気を出したいけれど、手持ちの小説の数が足りないというときは、空白(知識ではなく本棚の)を埋めるための偽物の本を製造する会社があります。
 さらには、「本棚」の柄の壁紙もたくさんあります。これを使えば、手っ取り早く蔵書を多く見せることができます。ただし、ゲッデズ・ブラウンさんが指摘するように、同じ本ばかりが繰り返し並んでいると、すぐに見破られてしまいます。
もちろん、より多くの人にとっての悩みの種は、本が多すぎて本棚に入りきらないことでしょう。そういう状況に陥り、おまけに手垢のついた大型本の箱をリサイクル店が引き取ってくれなかったとしても、安心してください。拡張可能なビリーの「上部追加ユニット」を使えばいいのです。
 私も最近、このユニットのお世話になったところですが、『フィネガンズ・ウェイク』を2冊も置くことになってしまいました。来客が1冊目のほうを見落とした場合に備えてです。

ページトップ

ページトップ