UKトピックス

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BBCニュースサイトより、注目のトピックスをお届けします。

お金がない? では、自分たちで作ったら? 地域通貨を考える

No money? Then make your own 

by BBCニュース マリー・ジャクソン 


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自分たちの手で現金を印刷することによって、本当に不況を克服できるのでしょうか。ロンドンのある商店街では、新しい地域通貨を流通させる試みが始まり、商店主たちはそれによって景気が回復することを期待しています。
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 現金が不足しているのですか。では、自分で作ってはどうですか……。英貨として使わない限り、違法にはなりません。それにお金を作るには、タバコ、兎の皮、紙切れ、何でもあなたの好きなものを使えばよいのです。
 南ロンドン地区のブリクストンという町で、買物客は木曜日が過ぎれば、例えば食料品を買う場合に10ブリクストン・ポンド(B£)を使うこともできるようになります。地域通貨の支持者は、お金を地域に滞留させることによって地域経済を活性化すると言い、批判する者は、流行りの小細工に過ぎず、悪影響を及ぼすことは保護主義に等しい、と切り捨てます。

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◎ブリクストン・ポンドの使い方
・モーリーズ百貨店かオーパス・カフェで、20ポンドを20ブリクストン・ポンド(B£)に両替します
・これを、地域通貨に加盟する70店余の商店、クラブ、パブ、カフェなどで使います
・次の買い物で、お釣りを受け取る時、商店主からブリクストン・ポンドで受け取ります
・このお釣りをまた他の店で使います。以下、同様
・ブリクストン・ポンドは、ブリクストン所在の特定企業で決済にも使われます
・お札は、1ブリクストン・ポンド、5ブリクストン・ポンド、10ブリクストン・ポンド、20ブリクストン・ポンドの4種類で、いずれも地元の名士の顔が印刷され、合計4万枚発行のお札は、透かし模様の紙にホログラムと連番が刷り込まれています
・ブリクストン・ポンドは、指定された地域外で使うことはできず、銀行に預けて利子を得ることもできません


 地域通貨は、実験的な試みのように見えますが、実は、通貨といえば地域通貨しかなかった中世以来、使われてきたものなのです。欧州では、1700年代に入ってようやく、それぞれの国が法定通貨をもつようになったとロンドン大学社会科学部(LSE)の経済学者ティム・ルーニッグ氏は言います。ある調査によると、経済全体が不況に陥ると、地域社会はバーター取引に活路を見出そうとするようです。言い換えると、手元にお金がなくなると、人々は自分でお金を作ろうとするのです。
 アメリカでも、1930年代の大恐慌の時代には、地域通貨は珍しくありませんでしたし、2001年、アルゼンチン経済がどん底に落ち込んだのを機に、グローバル・バーター・クラブ(アルゼンチンを本拠とする国際的なネットワーク)が誕生しました。このバーター制度は、最盛期には、300万人を支えていました。今日のように逼迫した状況になると、改めて補完通貨への関心が高まるのも不思議ではないところですが、得心が行かないブリクストンのある買物客は、「無駄じゃないですか?」と疑問を投げかけます。
 「地域経済は、穴のあいたバケツのようなものです。富はチェーンストアや連結企業集団の内部で発生し、消費されます。富は雲散霧消し、疲弊した地域経済だけが残る、というわけです」とベン・ブラングウィン氏は言います。彼は、2007年、デボン州南部で発足したトットネス・ポンドの発起人の一人です。「地域通貨はそれを防ぎ、バケツのまわりをお金が飛び交うようにし、地域社会の富と繁栄を築くのです」。
 6,000万ポンドといわれるこの地方の経済規模のなかで、今のところ、6,000トットネス・ポンドが流通しています。ブラングウィン氏は、これこそが大胆な、それもまだ始まったばかりの実験であることを強調し、やがて、英国では2,000種類もの地域通貨が生まれるだろう、と予測しています。環境保護団体トランジション・ネットワークが主導した実験には、イーストサセックス州ルーイス市や、今週、ストラウド・ポンドを導入したばかりのグロスターシャー州ストラウド市などが参加しています。

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偽札が心配


 賑やかな通りや活気のある夜の歓楽街で有名な半面、街頭犯罪でも悪名高いブリクストンは、独自の地域通貨を考案した最初の都市です。プロジェクトを支えるボランティアたちは、普及させるのに苦労した、と言います。商店主の中には、偽造紙幣が出回るのではないか、ブリクストン・ポンド札ばかりがレジに溜まることになるのではないか、と心配する人もいました。他の商店主は、地域のお札を、ギフト券として、あるいは、ひょっとすると収集マニアの関心を呼ぶかもしれない奇抜な宣伝ツールと考えています。

「自分たちの経済的未来を切り開こうという人々の意欲に懸かっています」
――バークシェアー共同発起人 スーザン・ウィッツ

ブリクストン・ポンドへ換金するために、これまでのところ企業や地域住民から1万ポンドが拠出されていますが、道行く人がみな賛同しているかというと、まだ努力の余地がありそうです。
プロジェクト・マネージャーのティム・ニコルス氏は、人々が、特殊なお札をもつ人だけの「秘密結社」的な感覚に惹かれ、ブリクストン住民の反骨精神がよい方に働くことを期待しています。「世界の金融界の中枢であるロンドンに住む私たちが、自分たちの生活が懸かっている一大銀行システムの性格になじまないことをしようとしているわけです」。彼はまた、不況が地域通貨に有利な方向に作用するだろうと、楽観しています。2006年に、アメリカマサチューセッツ州バークシャーで発足した地域通貨バークシェアーの共同発起人スーザン・ウィッツ氏も同じ見方をしています。バークシェアーは3年間で参加者を100万人から250万人に増やしましたが、この成長は、ある面で不況と人々の努力の産物、と彼女は考えています。

「地域通貨の試みは、ほとんど失敗します。何も達成できないからです」
――LSEの経済学者ティム・ルーニッグ博士

「新しい通貨を導入するというのは、手間のかかることなのです。それを使うには、スタッフを養成しなければなりませんし、会計手順も整備しなければなりません。いずれも、ものごとがうまくいっている時には、やらずもがなのことに見えるでしょう」と、ウィッツ氏は言います。「しかし、景気が悪くなると、企業は生き残りの道を探すものです。地域通貨が成功するかどうかは、自分たちの経済的未来を切り開こうという人々の意欲に懸かっています」。
しかし、代替通貨の支持者で、シンクタンク新経済財団のデビッド・ボイル氏は、英国における地域通貨の試みには、銀行システムが障害になっている、と考えています。アメリカでは、地方銀行が全国的なネットワークによって、どのような通貨の取り扱いにも意欲的なのに対し、英国の銀行は、それには消極的です。銀行のそういう姿勢を変えるには、地方政府の監督権限を強める必要がある、と彼は提言します。
しかし、最も重要なのは信念です、とボイル氏は言います。「地域社会の中で、その信念を貫くことができれば、うまくいきます」と彼は語っています。


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税金逃れ


考え方自体が小細工にすぎない、と言い切る経済学者もいます。「地域通貨は、人々を気分よくさせるかもしれませんが、意味のあることは何も達成していません」と語るのは、LSEのティム・ルーニッグ氏です。
「たとえ価格が安くとも、ハックニーやサザークや中国から物を買ってはいけない、というのでしょう。それは、ブリクストンの商店に独占権を与えることになり、長期的にはインセンティブ(誘因)を損ないます。地域通貨の試みは、ほとんど失敗します。何も達成できないからです」と、彼は言います。彼が地域通貨に見出し得る唯一の効用は、税金逃れだそうですが、税務署にとっては、地域通貨は目眩ましにすぎない、と言います。
企業はすべて、総売上高を報告しなければなりませんが、どの地域通貨であっても英貨と結びついていますので、支払いに使われた通貨が、たとえクリームケーキであろうと、ホッキョクグマであろうと、ニンジンであろうと、どの売上高も英貨換算で報告しなければならない、と歳入関税庁は言っています。そして、もしあなたが会社を経営しているのでなければ、歳入関税庁は関知しません。利潤追求のないところに、課税はないからです。ちなみに、財務省は、地域通貨をギフト券ぐらいにしか見ていません。
このように、政府は鷹揚に構えているわけですから、ブラングウィン氏の言うように、2,000種類の地域通貨というのも夢ではないかもしれません。しかし、それは、未来への勇気ある躍進なのでしょうか、それとも中世への回帰なのでしょうか。

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