UKトピックス

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BBCニュースサイトより、注目のトピックスをお届けします。

意思で老化は止められるか?

Can the power of thought stop you ageing?

1979年の実験

 1979年、心理学者のエレン・ランガーは、思考パターンの変化によって老化を遅らせることが可能であるかを調べるための実験を行いました。しかし、その驚くべき実験の全貌は、今日まで明らかにされてきませんでした。
 老化とは、どの程度コントロールできるものなのでしょうか。
 積極的思考によって老年期の健康状態を左右できるという考えは、多くの人にとっては笑い話に思えるでしょう。老化の抑制は、製薬産業や化粧品産業にとっての究極の目標ですが、ハーバード大学の心理学者エレン・ランガーが今から30年前に行った実験は、そのための重要な鍵を握っているかもしれません。
 ランガー教授は、自身の研究生活のすべてを捧げて、人間の精神が健康に及ぼす力について調査してきました。通常医療は、この2つを別個のものとして扱うという点で、しばしば批判されています。
 「精神が肉体に何らかの影響を及ぼすことは、誰でも知っていることですが、その影響が実際にどれほど甚大なものであるかについては、理解されていないと思います」と教授は述べています。
 1979年、ランガー教授は画期的な実験を行いました。その結果の全貌は、現在ようやく明らかにされつつあります。
 ランガー教授は、「回顧週間」の集いという名目で、70歳代後半から80歳代の老人男性を募集しました。老人たちには知らされていませんでしたが、それは老化の研究の一部であり、20年の月日をさかのぼるという実験を行うためでした。
 教授は、20年前の精神状態に戻ることで、身体に何らかの変化が表れるかどうかを調べることを目的としていました。
老人男性たちは2つのグループに分けられました。どちらのグループも、ボストン郊外の宿泊施設で1週間を過ごすというものでした。
 ただし、対照群とされた第1のグループは、50年代の生活を回顧するだけであったのに対し、もう一方のグループは、タイムワープともいうべき環境に置かれました。この実験群の老人たちは、50年代の小道具に囲まれて暮らし、実際に1959年にいるかのようにふるまうよう指示されました。
 その当時の映画や音楽を鑑賞し、カストロのハバナ制圧や、NASAの最新の人工衛星の打ち上げについて、すべて「現在形」で議論したのです。
 ランガー博士は、老人たちを、かつての生活と同じような環境に置くことによって、若く元気な頃の精神状態に戻すことができると考えたのです。
 そして、健康な人間としての行動を妨げる要因をすべて排除しようと考えました。宿泊施設には、手すりなどの高齢者を補助するための設備が備えられていませんでした。はじめから、老人たちに自分の力で生活をさせる気でいたのです。
 宿泊施設に着いてバスを降りたとき、ランガー教授は老人たちのスーツケースを運ぶ手伝いをしませんでした。「1インチずつ動かすか、バスのなかでスーツケースを開けて、シャツを1枚ずつ運べばいいと伝えたのです」。
 老人たちは、20歳若かった頃に完全に戻った状態に置かれました。
 当然ながら、ランガー教授にも不安はありました。「理解していただきたいのですが、彼らが研究に応募するために大学を訪れ、廊下を歩いて研究室までやって来たときは、今にも死にそうに見えたものです。学生たちに、『なぜこんなことをやろうとしているのかしら? あまりにもリスクが大きい』と自分で言ったほどです」。
 しかし、老人たちはすぐに自分で食事を作りはじめました。自分で判断を下しはじめました。無能な人間や病人として扱われなかったからです。
 変化はまもなく表れました。ランガー教授は、日がたつにつれ、老人たちの歩調が速くなり、自信も回復しつつあることに気づきました。最終日の朝に、もう杖を使わないと決めた老人さえいたほどです。
 ボストンへ戻るバスを待つあいだ、ランガー教授が老人の一人にキャッチボールをしないかと誘ったところ、数分後には、それが即興の「タッチフットボール」の試合へと発展していました。

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公表された実験の全貌

 当然ながら、このような事例証拠は、研究の上では大した意味をもちません。
 しかし、ランガー教授は1週間の実験期間の前後に生理学的測定を行い、老人たちの機能があらゆる面で向上したことを発見しました。足取りや、機敏性、関節炎の症状、動作の速度、認識能力、記憶力のすべてにおいて、顕著な改善が見られたのです。
 血圧は下がり、さらに驚くべきことに、視力や聴力も向上しました。どちらのグループにも改善は見られましたが、実験群にはとくに大きな変化がありました。
ランガー教授は、彼らの考え方を若くすることで、肉体もそれにつられて実際に「若返る」ことになったのだと考えています。
 教授は1981年に初めて科学的データを発表しましたが、より興味深い逸話の多くは、公表しませんでした。当時は若手の研究者であったため、そうすることによって実験に傷がつき、研究結果が評価されなくなるのではないかと恐れたのです。
 30年あまりに渡り精神と身体のつながりを研究し、ハーバード大学教授としての自信と説得力を身につけた教授は、実験の全貌を公表してもよいと感じるようになりました。
 「私が老いについて抱いている考えとは、並はずれた人間のみならず、普通の人であっても、非常に充実した生活を送ることが可能だということです。病気もせず、衰弱を招くような記憶力の低下もなく、私たちが恐れる要素の多くに悩まされずに暮らすことは、可能なのです」。
 ハートフォードシャー大学で一般市民の心理学理解を研究するリチャード・ワイズマン教授は、ランガー教授の実験結果に魅力を感じていますが、何がその要因であるかが大きな問題だと指摘しています。「さまざまな要因が関与していると考えられますが、問題は、そのなかでどの説明がほんとうに妥当であるかということです」。
 「自己認識もその一つでしょう。たとえば、人を微笑ませると、その人は幸せだと感じます。それと同様に、人を若くふるまわせることによって、若いと感じさせられるということです」。
 ワイズマン教授は、やる気も一つの要因ではないかと考えています。老人たちは、1週間の終わりが近づくにつれて、よりがんばっただけなのかもしれません。また、一種の催眠状態にあったとも考えられます。たとえば、記憶力がよくなると暗示をかけられた人は、記憶力テストで実際よりもいい結果を出します。
 理由が何であれ、ワイズマン教授は、この研究で示されたようなタイプの積極的思考には、活用の場があると考えています。
 「たとえば、心臓病などの場合、積極的思考が役に立ちます。心臓そのものを治すわけではありませんが、積極的に考えることで、健康的な食事をとり、運動をするなどの積極的な行動につながり、それが効果をもたらすのです」。
 いずれにせよ、1979年の実験に対する関心は高まっているようです。ジェニファー・アニストンの新たな映画製作会社が、研究をまとめたランガー教授の著作の映画化権をいち早く購入し、アニストンが教授役を演じると伝えられています。

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