レイジーフードが人気上昇中
皮をむいたジャガイモ、乱切りのニンジン、刻んだタマネギなど、レイジーフード(半調理食品)の売上が伸びています。ところが、料理で手抜きをする私たちには何か問題があるのでしょうか。
ジャガイモの皮をむいている間に人生のどの程度の時間が消えていくか、考えてみて下さい。
ジャガイモを袋から取り出し、芽が出ていたら取り除き、場合によっては水道の栓をひねって水洗いし、そして皮をむきます。
ジャガイモの皮むきが、軍隊で懲罰を受ける者に対する古典的な罰であるのも、驚くにはあたりません。
タマネギを刻むのにたいして技術が必要になるわけではありません。忙しくてそんなことはしていられないと自分に言い聞かせるのです――家政学者レスリー・ボール
多くの人にとって、ジャガイモの皮むきに数分かけるのもつまらないことで、そんなことをするぐらいなら本を読んだり、映画を観たり、家族と過ごしたりしていたいのです。
イギリスには、本当にごく基本的な料理の手間もかけられない人たちがいます。今週発表された価格比較ウェブサイトmysupermarket.co.ukの数字によると、おろしチーズ、スライスした果物、刻んだ野菜など、かごに盛った「レイジーフード」商品に費やされる金額は過去二年間、増え続けています。
さまざまな「レイジーフード」や料理の「手抜き」食材をそろえたスーパーチェーンのウエイトローズなどの小売店に話を聞くと、こうした状況は拡大しているようです。
高級品市場のチェーン店では、詳しい売上データを公表することなどめったにないのですが、皮をむいたジャガイモの売上が1年前と比べて40%増えています。刻んだタマネギは14%の増加です。同店のニホンカボチャとサツマイモのミックスは29%増加しました。下ごしらえ済みの野菜全体では17%増加しています。
こうした増加はすべて、景気後退によって途切れていたにせよ、より便利な食品へと向かうさらに広範囲な傾向の一端だろうと語るロナン・ヘガーティ氏は、食料品に関する雑誌『ザ・グローサー(The Glocer)』のニュース編集者です。
「人々はもっとたくさんの選択肢を欲しがっている、ということです。怠けているわけではなく、不規則な時間に食事をしていたり、あるいは、職場で何か簡単なものを作ったりしているのでしょう。こういったものは選択肢としては余計にお金がかかることが多く、景気後退の影響は大勢の人が推測するほど受けていないのかもしれません。マークス・アンド・スペンサー社のシンプリー・フードやテスコエクスプレスなどの小売店では多忙な人々の割合が高くなっています。便利な商品の人気は確かに相変わらず上向きです」。
牛乳はトラやニワトリからできる?
「レイジーフード」のさらに極端な例の中には、料理の腕前が落ちてきていることを示していると思われるようなものがあります。
1998年に料理研究家のデリア・スミス氏が視聴者に卵のゆで方を教えたとき、大勢の評論家が信じられないことだと言い、シェフのゲーリー・ローズ氏は、視聴者の知性に対する侮辱だとして彼女を非難しました。ところが昨年、評論家たちがまた絶望的になるようなことが起こりました。スーパーマーケットでゆで卵が売り出されたのです。
「レイジーフード」は現代の典型的な社会経済カテゴリーの一つ、つまり、お金はあるが時間がない人々に適合しています。とはいえ、刻んだり皮をむいたりすることが廃れていくのを残念に思う人たちもいるのです。
イングランド南部のウィルトシャーに拠点を置く家政学者レスリー・ボール氏は、子どもたちに健康的な食べ方や食べ物の産地を教えていますが、下ごしらえのできた手軽な食材は、食べ物とその産地に対する見方をゆがめさせると言います。
「私の仕事は、子どもたちを相手にすることが多いのですが、子どもたちの中には牛乳がトラやニワトリからできると思っている子がいます。例えばマンゴーやメロンやパッションフルーツなどをすぐに食べられるようにした商品には、新しい味を覚えさせるために丸ごと買わなくても子どもたちに与えるのに格好のものがありますが、それではマンゴーがどういう形のものなのか、全くわかりません。こうしたことは、オレンジのような、珍しくないものでも起こっています。子どもたちは、食べ物を生育するものとしてではなく、店先にあるものとして連想します」。
料理する時間はないと思っている
人々が料理の手間を惜しむことに対して、若干の失望が必然的にあります。「ニンジンやタマネギなどが、スライスされた状態で売られていることだけでも驚かされます。タマネギを刻むのに大した技が要るわけではありませんが、忙しくてそんなことはしていられないと自分に言い聞かせるのです。スーパーマーケットで仕事をする度に、こうした商品を買う人たちを観察していますが、典型的なのは専門職の若い世代から中年の世代です。下ごしらえのできた食材は手抜き料理につながります。こうした人たちは本格的な料理をする時間がないと思っています。でも、料理は儀式のようなもので、最初から自分で下ごしらえをした食材で始めるプロセスなのです。下ごしらえは料理の大切な一部分です。これから何を作るのか、それで感触をつかみます。食べ物は一から作ったほうがおいしいものです」。
彼女が毛嫌いしているものがあります。「冷凍したローストポテトです。ローストポテトを作るのはめんどうではありませんよ。ジャガイモを乱切りにして、オリーブオイルをかけてオーブンに入れるだけでいいのですから」。
「レイジーフード」の増加には、明らかに環境問題もあります。スライスしたタマネギはビニール袋に入って売られています。スライスしていないタマネギは自前の自然の包装、つまりタマネギの皮に包まれて売られます。
ロンドンの料理学校の校長であるロザリンド・ラットハウス氏は、いわゆるレイジーフードの売上が伸びていることに驚いてはいません。人々が自分の食べるものについての食育からいかに遠ざかっているかを反映したものとみています。
彼女の学校の料理教室を修了していく人の多くは、食材の旬や日持ちについてほとんど知りません。
「忙しい人たちの立場に立てば、こうした食品を選ぶ理由は理解できます。出来合いのソースの一歩手前なので、その点ではそれほど悪くはありません。これは近道であり、食べ物を本当に愛する人には向きませんが、空腹を満たしたいだけなら十分です」。
彼女は刻んだニンジンを買ったことがあるでしょうか。「一度もありません。下ごしらえしたニンジンなんて、買おうとも思いません。誰でも、できるだけ新鮮なニンジンが欲しいはずです。機械にかけられて、新鮮さを保つためのガスを充填したビニール袋に詰められているのなんて、嫌なものですよ」。
ビタミンは失われる
栄養面はどうでしょう。下ごしらえ済みの野菜や果物も、手つかずの本物と同じ栄養価があるのでしょうか。「1種類か2種類のビタミンは非常に不安定です。つまり、簡単に壊れるということです」と説明するジュディ・バトリス氏はイギリス栄養財団(British Nutrition Foundation)の総裁です。「キャベツやピーマンなどを切ると、切り口から次第にビタミンが失われていきます」。
しかし、便利さを支持する人たちへの朗報は、すべてのビタミンが失われるわけではないということです。ビタミンCと葉酸は空気に触れることで一部が失われるとバトリス氏は言いましたが、緑色野菜から失われる可能性のあるほかの栄養素はなかなか思いつきません。それに、失われるにしても、何もないよりはましです。
栄養面はどうでしょう。下ごしらえ済みの野菜や果物も、手つかずの本物と同じ栄養価があるのでしょうか。「1種類か2種類のビタミンは非常に不安定です。つまり、簡単に壊れるということです」と説明するジュディ・バトリス氏はイギリス栄養財団(British Nutrition Foundation)の総裁です。「キャベツやピーマンなどを切ると、切り口から次第にビタミンが失われていきます」。
しかし、便利さを支持する人たちへの朗報は、すべてのビタミンが失われるわけではないということです。ビタミンCと葉酸は空気に触れることで一部が失われるとバトリス氏は言いましたが、緑色野菜から失われる可能性のあるほかの栄養素はなかなか思いつきません。それに、失われるにしても、何もないよりはましです。
「結果として果物や野菜をもっとたくさん食べるようになるなら、それはそれでよいことです」。
袋入りのサラダ用野菜に薄めた漂白剤を使うことについては、かつて人々の非難を浴びてきましたが、少なくとも栄養の点から下ごしらえ済み野菜を批判するのは容易ではないようです。
こうした食品は、便利だが不健康な食品の第1位ではありません。その地位は、塩分が多く高脂肪の調理済み食品が占めています。
こうした「レイジーフード」は最も一般的には料理を簡単にするものであって、料理を避ける「フィルムに穴を開けてレンジでチン」ではないのです。
それにまた、許容範囲内の便利さと思うものと、筋の通らないほど退廃的な費用とみなすものとの間には、人によりスライディングスケール(経済状態に応じて上下する率)があるという議論も成り立つかもしれません。
ゆで卵を売るという考えを笑う人がいるかもしれませんが、落花生の殻はどうしても自分でむくという人が、どれほどいるでしょうか。
皮をむいたニンニクのかけらなんて甘えているように思えるかもしれませんが、今どき羽もむしらず頭もついたニワトリを欲しいという人がいるでしょうか。
食べ物を買うという考え自体、本質的に「レイジー(無精)な」要素を含んでいます。自分の手で殺すことも育てることもしなかったのですから。
スーパーマーケットというものが、無精への堕落をさらに進めます。肉屋、パン屋、八百屋などを探し回る必要がなくなるからです。
けれども、「レイジーフード」が極端に走りすぎ、冗談としか思えないようなことは、これからもあるでしょう。
「一つ、前からあきれているのはスライスしてあるリンゴです」とへガーティ氏は言います。「丸のままのリンゴが怖くてだめだなんて人がいるのでしょうか」。
